youtakeA
DONE【刀剣乱舞】※創作審神者
顕現順にうちの審神者と刀剣男士の初対面を書くよのシリーズ
#うちの審神者と初対面 〈へし切長谷部〉
「へし切長谷部、と言います。主命とあらば、何でもこなしますよ」
シュメイ、という三音を意味あることばとして認識するのに数秒がかかった。主命。主の下す命。刀剣男士にとって主とはすなわち審神者であり、かれの言う主命とは私の下す命令だ。しかし――。
「ようこそ、この本丸へ。えっと、だね……」
挨拶の間にどうにか態度を取り繕おうと試みたが、その足掻きはあっけなく徒労に終わった。目の前に佇む男の眉間に、疑念と不安を綯い交ぜにした皺が寄る。
「どうかなさいましたか」
そのことばには、私への配慮と自らの振る舞いへの反省と、その両方が同等に含まれていた。ひとまず、後者は打ち消さねばならない。
「いや、あまりに丁重に接してくれるものだから驚いただけだよ。気にしなくていい」
1780シュメイ、という三音を意味あることばとして認識するのに数秒がかかった。主命。主の下す命。刀剣男士にとって主とはすなわち審神者であり、かれの言う主命とは私の下す命令だ。しかし――。
「ようこそ、この本丸へ。えっと、だね……」
挨拶の間にどうにか態度を取り繕おうと試みたが、その足掻きはあっけなく徒労に終わった。目の前に佇む男の眉間に、疑念と不安を綯い交ぜにした皺が寄る。
「どうかなさいましたか」
そのことばには、私への配慮と自らの振る舞いへの反省と、その両方が同等に含まれていた。ひとまず、後者は打ち消さねばならない。
「いや、あまりに丁重に接してくれるものだから驚いただけだよ。気にしなくていい」
itonomonogatari
PROGRESS色塗り。ゆるゆる進行。この後にまた重ねてペン入れ。。先が長いけど出来上がった時に自分の中で「想う」「感じた」悲伝の三日月宗近の「姿」がそこに生まれて嬉しいから頑張っちゃう🌙物語とそこに紡がれて流れる時間もその中に在る人々や刀剣男士の想いも
全てが美しく素晴らしいと感じるからとても好き。
「時」という美しさ。
youtakeA
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顕現順にうちの審神者と刀剣男士の初対面を書くよのシリーズ
#うちの審神者と初対面 〈小烏丸〉
「我が名は小烏丸。外敵と戦うことが我が運命。千年たっても、それは変わらぬ」
たとえば、晩春の山を藪を漕ぎながら登っていると不意に空気の変わることがある。「ここから先は人の踏み入る場所でない」という警告を全身に受ける。たった今自分が進めた一歩で景色のどこが変わったわけではない。足元に降り積む土になりかけの朽葉、腿の半ばまで届く数多の草々、高いところで太陽の日を透かす枝葉の緑。すべて、なにひとつ変わってはいない。
しかし、そんなとき私は確かに山のなにか侵犯しているのだ。だから即座に、かつ息をひそめて振り返り、来た路を戻る。山で育つ私たちは、その見極めを子供の時分から少しずつ覚えて育つ。
顕れた男士は、その頭頂が私の目線より低い位置にある。なのに私の心は、見下ろしているはずの男士をはるか仰ぎ見ている。里から山の頂を見上げ、日常であるはずのその風景に突如畏怖をあらたにする、あの心地。あの山路をもし警告に抗ってさらに進んでいたなら、そこで出会うのはあるいはこのような存在だったのかもしれない。
1379たとえば、晩春の山を藪を漕ぎながら登っていると不意に空気の変わることがある。「ここから先は人の踏み入る場所でない」という警告を全身に受ける。たった今自分が進めた一歩で景色のどこが変わったわけではない。足元に降り積む土になりかけの朽葉、腿の半ばまで届く数多の草々、高いところで太陽の日を透かす枝葉の緑。すべて、なにひとつ変わってはいない。
しかし、そんなとき私は確かに山のなにか侵犯しているのだ。だから即座に、かつ息をひそめて振り返り、来た路を戻る。山で育つ私たちは、その見極めを子供の時分から少しずつ覚えて育つ。
顕れた男士は、その頭頂が私の目線より低い位置にある。なのに私の心は、見下ろしているはずの男士をはるか仰ぎ見ている。里から山の頂を見上げ、日常であるはずのその風景に突如畏怖をあらたにする、あの心地。あの山路をもし警告に抗ってさらに進んでいたなら、そこで出会うのはあるいはこのような存在だったのかもしれない。
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#うちの審神者と初対面 〈山姥切長義〉
「俺こそが長義が打った本歌、山姥切。どうかしたかな? そんなにまじまじと見て」
迷いない意思を示す両眉の弧、眼前の者を斬って捨てたとて揺らぐことなどないのだろう眦の鋭さ。そして、傲岸なほどに確固として己を誇る自負に裏打ちされた、余裕の窺えるおだやかな笑み。
「いや、何でもないよ。ようこそ、この本丸へ」
政府からやってきた男は、みずから問いを投げかけておきながら私の返したことばに関心を示すことはなく、こちらを値踏みする気配を眼光の奥に堂々と潜ませながら滔々と語り出した。
「君は少々特殊な経緯で審神者になったからね。政府としても、君と、そしてこの本丸に属する刀剣男士の情報の収集は密に行いたい。そこで俺が派遣されたというわけだ。わかったかな」
1360迷いない意思を示す両眉の弧、眼前の者を斬って捨てたとて揺らぐことなどないのだろう眦の鋭さ。そして、傲岸なほどに確固として己を誇る自負に裏打ちされた、余裕の窺えるおだやかな笑み。
「いや、何でもないよ。ようこそ、この本丸へ」
政府からやってきた男は、みずから問いを投げかけておきながら私の返したことばに関心を示すことはなく、こちらを値踏みする気配を眼光の奥に堂々と潜ませながら滔々と語り出した。
「君は少々特殊な経緯で審神者になったからね。政府としても、君と、そしてこの本丸に属する刀剣男士の情報の収集は密に行いたい。そこで俺が派遣されたというわけだ。わかったかな」
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#うちの審神者と初対面 〈薬研藤四郎〉
「よお大将。俺っち、薬研藤四郎だ。兄弟ともども、よろしく頼むぜ」
「……よろしく」
童じゃないか、と叫ぶところをぐっとこらえたのは、我ながら見事だった。しかし表情までは繕いきれなかったらしい。少年の首がかくんと傾く。あわせて、こども特有の、その一本一本が内から光を放つようなつややかな髪がさらりと揺れる。
「なんだ大将。なにか気になることでもあるか」
首を傾げながら、その態度は超然としている。臆しもしない、媚びもしない。遠路わざわざ私の家までやってきた役人が、「審神者が率いるのは刀剣に宿った神々です。主たるあなたに直に手向かうことはないでしょうが、ゆめゆめ御無礼のないように」と言い置いていったことを思い出す。
1260「……よろしく」
童じゃないか、と叫ぶところをぐっとこらえたのは、我ながら見事だった。しかし表情までは繕いきれなかったらしい。少年の首がかくんと傾く。あわせて、こども特有の、その一本一本が内から光を放つようなつややかな髪がさらりと揺れる。
「なんだ大将。なにか気になることでもあるか」
首を傾げながら、その態度は超然としている。臆しもしない、媚びもしない。遠路わざわざ私の家までやってきた役人が、「審神者が率いるのは刀剣に宿った神々です。主たるあなたに直に手向かうことはないでしょうが、ゆめゆめ御無礼のないように」と言い置いていったことを思い出す。
紅(雑多)
DONE弟大好きモンスター兄者漫画です。大包平はあながち間違った指摘はしていないのですが兄者の逆鱗に触れてしまい可哀想です。ちゃんとこの後のオチ(髭膝風味)もありますがそちらは支部にてアップする予定です。 5youtakeA
DONE【刀剣乱舞】※創作審神者
顕現順にうちの審神者と刀剣男士の初対面を書くよのシリーズ
#うちの審神者と初対面〈山姥切国広〉
「山姥切国広だ。……何だその目は。写しだというのが気になると?」
その口ぶりはひねたことばのわりに遠慮がなく、そこに込められているのは不安や自己猜疑でなく眼前の私をこそ糾弾する意思だった。なるほど、と、理解に詰まったときの常で、まず胸中でそう呟いておく。なにもかも、「なるほど」と唸ることから関係は始まる。
「――申し訳ないんだけれども」
みずからの声音から皮肉や憐憫の見出されないよう、努めて声帯から力を抜き、妙に小汚ない布を被った男に向けてただ直線にことばを放る。
「私は、審神者なんて仰せつかってはいるが刀剣にもこの国の歴史にも疎くてね。〝うつし〟というのは、なんなのかな」
対人関係においては常に補完を目指すくせが、ひねたことばに対して素直な問いを発させた。私の無教養に呆れたのか、あるいは己の無知を開けっぴろげにさらす姿に虚をつかれたのか。男は黙りこんだ。
1314その口ぶりはひねたことばのわりに遠慮がなく、そこに込められているのは不安や自己猜疑でなく眼前の私をこそ糾弾する意思だった。なるほど、と、理解に詰まったときの常で、まず胸中でそう呟いておく。なにもかも、「なるほど」と唸ることから関係は始まる。
「――申し訳ないんだけれども」
みずからの声音から皮肉や憐憫の見出されないよう、努めて声帯から力を抜き、妙に小汚ない布を被った男に向けてただ直線にことばを放る。
「私は、審神者なんて仰せつかってはいるが刀剣にもこの国の歴史にも疎くてね。〝うつし〟というのは、なんなのかな」
対人関係においては常に補完を目指すくせが、ひねたことばに対して素直な問いを発させた。私の無教養に呆れたのか、あるいは己の無知を開けっぴろげにさらす姿に虚をつかれたのか。男は黙りこんだ。
OtohaFrappe
REHABILI小竜と獅子王の非番の日。地味に仲が良い二振りという妄想。
桜の盛りも大分過ぎ、葉が目立つようになった桜の枝がそよ風に揺れている。誰かの笑い声が遠くから聞こえてくる中、自室で本をぱらぱらとめくっていた小竜は、本を閉じて軽く伸びをした。
今日は久しぶりの非番。特にすることがあるわけでもない。片付けでもしようかと思ったが、部屋を見回しても片づける必要があるほど散らかってもいなかった。小竜の部屋は細々とした物は多いが、性分なのか常にある程度は整理整頓されている。
(うーん、暇だなあ)
何もしないのもなんだか勿体ない気がするが、連日の出陣の影響か、なんだかどこかふらっと旅に出たいとも思えない。正直に言って、この日の小竜は少し疲れが溜まっていた。
(あ、そうだ)
適当に開けた引き出しの中を見て、小竜は今日の行先を決め、引き出しの中から小瓶を一つ取り出すと、自室を後にした。
1646今日は久しぶりの非番。特にすることがあるわけでもない。片付けでもしようかと思ったが、部屋を見回しても片づける必要があるほど散らかってもいなかった。小竜の部屋は細々とした物は多いが、性分なのか常にある程度は整理整頓されている。
(うーん、暇だなあ)
何もしないのもなんだか勿体ない気がするが、連日の出陣の影響か、なんだかどこかふらっと旅に出たいとも思えない。正直に言って、この日の小竜は少し疲れが溜まっていた。
(あ、そうだ)
適当に開けた引き出しの中を見て、小竜は今日の行先を決め、引き出しの中から小瓶を一つ取り出すと、自室を後にした。
itonomonogatari
PROGRESS次の白三日月下描き中。私が描く白三日月。時々「悲伝」の三日月と言って良いのかなとふと想う時もある。。
私が描く白三日月は「悲伝」と同じ運命を廻る三日月でありながらも向かう先は「ハッピーエンド」も「バッドエンド」もなく。帰ることもない。廻る運命を見守り紡ぐ糸。「悲伝」の辿るルートではない「悲伝」の三日月宗近🌙かな。
OtohaFrappe
REHABILI刀だから眠らないけど、じっちゃんと一緒に眠ってみたい獅子王。※獅子王とじっちゃんしか出てきません。
※刀剣男士として顕現するより前の話。じっちゃんには獅子王が見えています。
こんな感じの、眠りがキーワードの一つになる獅子王とじっちゃん(と送り主=帝)の短編集か何かをつくりたいな~とぼんやり考えていくつかネタだししていたうちの一つです。
眠らぬ獅子が眠るとき「なあ、じっちゃん。眠るってどんな感じなんだ?」
邸に帰ってきた頼政を出迎えた獅子王が、二人で居室に入るなり投げかけた問いに、頼政は少し間を置いて静かに返した。
「眠り、か。心身を休める為には必要不可欠なことだ。身体だけでなく心を休め、しばし浮世の些事から離れる」
「夢ってのをみることもあるんだよな?」
「ああ。眠りについた後は意識はなくなるが、夢をみることもある」
ふうん、とだけ呟いてしばらく難しい顔をしている少年に、老将が何かあったのかと問うてみると、考え考えといった様子で少しずつ言葉が返ってきた。
「寝るときの人間ってどんなこと考えてんのかなって、気になってさ」
金の髪を持つ少年は、自らの傍らに佇んでいた相棒の背を撫でながら、ゆっくりと言葉を選ぶ。
983邸に帰ってきた頼政を出迎えた獅子王が、二人で居室に入るなり投げかけた問いに、頼政は少し間を置いて静かに返した。
「眠り、か。心身を休める為には必要不可欠なことだ。身体だけでなく心を休め、しばし浮世の些事から離れる」
「夢ってのをみることもあるんだよな?」
「ああ。眠りについた後は意識はなくなるが、夢をみることもある」
ふうん、とだけ呟いてしばらく難しい顔をしている少年に、老将が何かあったのかと問うてみると、考え考えといった様子で少しずつ言葉が返ってきた。
「寝るときの人間ってどんなこと考えてんのかなって、気になってさ」
金の髪を持つ少年は、自らの傍らに佇んでいた相棒の背を撫でながら、ゆっくりと言葉を選ぶ。